治療について
治療情報
前立腺肥大症の手術について
前立腺肥大症の手術に対し、ツリウムレーザーを2023年度より導入しました。ツリウムレーザーによる前立腺蒸散術(ThuVAP)は抗血小板薬や抗凝固薬を内服していても手術が受けられます。ツリウムレーザ術後の尿道バルーンカテーテル留置期間も経尿道的前立腺切除術(電気ループで前立腺を切除する方法)に比較し、前者は平均2日、後者は平均7日と短く、入院日数も短いというメリットがあります。
ツリウムレーザー蒸散術
全身麻酔ができない男性で尿閉の方(前立腺肥大症、神経因性膀胱)に対しては、尿道バルーンカテーテルを留置となることが多いと思いますが、患者さんの希望により尿道ステント「メモカス®」を留置して、カテーテルフリーの状態となるように努めております。
短期留置型尿道ステント(Memokath®)
後部尿道ステント“メモカス028”:泌尿器|株式会社キースマック(kysmaq.co.jp)
尿路結石の手術について
なお、当院では体外衝撃破結石破砕術は取り入れておりません。
膀胱尿管逆流現象の手術について
膀胱尿管逆流現象のある成人の患者さんに、内視鏡注入療法を始めました。これは、膀胱鏡を用いて尿管口周囲の粘膜下にデキストラノマーとヒアルロン酸の合剤であるDefluxⓇを注入する方法です。経尿道的 DefluxⓇ注入療法は低グレードの原発性 VUR に対する低侵襲治療として小児にも広く使用されています。
膀胱がんの治療について
表在性膀胱がんの手術では経尿道的膀胱腫瘍切除(TUR-BT)を行いますが、新世代HX-FIカメラヘッド(KARL STO社製)を用い術中、光力学的診断(PDD)を行うことができます。PDDは5-アミノレブリン酸という薬剤を服用し、蛍光内視鏡を用いて、がんなどの病変を蛍光発光させて観察する方法です。見つけにくい上皮内癌や1、2ミリの小さながんも発光するため、手術時の取り残しを減らせる可能性が期待できます。
ただし、光線過敏のある方、5-アミノレブリン酸との併用で光線過敏を惹起させる可能性のある薬を内服している場合は適応外となりますので、事前に内服薬は確認させてもらいますので、必ずお薬手帳を、外来受診時に持参してください。
筋層浸潤性膀胱がんで膀胱全摘ができない方に対しては、放射線化学療法ができるようになりました。
転移性膀胱がんに対しては、抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害薬等をガイドラインに推奨された治療を行います。
腎盂尿管がんの治療について
多臓器転移の無いものに関しては腎尿管全摘手術を行います。2023年度より腹腔鏡の手術を導入しました。東邦大学大森病院より腹腔鏡指導医に来てもらい、腹腔鏡手術を行っております。転移のある腎盂尿管がんにたいしては抗癌剤治療、免疫チェックポイント阻害薬をガイドラインに準じた加療を行います。
腎細胞がんの治療について
転移のない腎細胞がんに対しては、根治的腎摘出術を行います。2023年度より腹腔鏡の手術を導入しました。東邦大学大森病院より腹腔鏡指導医に来てもらい、腹腔鏡手術を行っております。転移のある腎細胞がんに関しては免疫チェックポイント阻害薬、分子標的療法をガイドラインで推奨された加療を行います。
前立腺がんの治療について
局所進行性前立腺がん・高リスク前立腺がんの一次治療の一つとして、放射線治療+ホルモン療法(IMRT:強度変調放射線治療)を行っております。放射線治療は目に見えない高エネルギーX線を用いてがん細胞の遺伝子を破壊し、がんの増殖を抑えたり死滅させたりします。日本人は、前立腺と直腸の間の脂肪が少なく、ほぼ接している状態が多く、そのため前立腺への照射の際に、放射線感受性の高い直腸粘膜に高い線量の放射線を受けやすく、頻便や直腸出血などの直腸障害を生じることがあります
直腸への合併症を予防する目的で、前立腺がんの放射線治療前にSpaceOAR™ハイドロゲル(前立腺と直腸の間にハイドロゲルを注入治療)を推奨します。ハイドロゲルは半年ほどで自然医吸収されます。また、ハイドロゲル注入時に、前立腺への放射線照射をより正確に行うため前立腺に金マーカーを挿入することもあります。
・年齢や転移等に応じ、ホルモン療法、新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)、抗がん剤治療などガイドラインに準じて治療を行います。ARSIを導入した場合、遺伝子検査が受けられるようになります。遺伝子検査に関しては、東邦大大森病院に検査を依頼して行っています。
★浸潤性膀胱癌の膀胱全摘術+尿路変更術、前立腺がんのロボット支援下前立腺全摘術に関しては行っていませんので、他施設にご紹介しております。ロボット支援手術に関しては来年度以降の導入を検討しております。
当院では以下の研究を実施しております。
この研究は、通常の診療で得られた検査データで行われます。このような研究は、国が定めた指針に基づき、対象となる患者さんのお一人ずつから直接同意を得るかわりに、研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開することが必要とされています。研究結果は学会等で発表されることがありますが、その際も個人を特定する情報は公表いたしません。
ダウン症候群患者における加齢による残尿量の変化に関する研究
1.研究の対象
2023年5月から5年間 東京品川病院泌尿器科部長 青木の外来を受診したDown症候群の方(年齢、性別とわず)
2.研究目的・方法
ダウン症候群の患者は、幼児期には夜尿症、頻尿、尿失禁などの畜尿障害がしばしばみられ、高学年以降に残尿量増加や尿閉などの排尿障害が出現すると報告されています。しかし、症状が出現し始めても本人たちが自覚せず、また自覚ができるようになってもどのように訴えたらよいか分からず、重篤化(尿閉、腎後性腎不全)することがあります。この研究によりよりダウン症候群をもつご家族や医療従事者に広報することで、患者さんおよび親御さんが安心して健康な生活を送ることができることを目的としております。
方法は、患者さん毎に、毎年、超音波断層法で残尿量(排尿直後に膀胱内に尿がどのくらい貯まっているか)を確認します。通常は0㎖です。そして毎年の残尿量の変化を観察していきます。
残尿が出現してきた患者さんに関しては3か月ごとに残尿量の増加の有無を確認します。残尿量が50ml以上となった患者さんに関しては内服加療を行います。
3.研究に用いる試料・情報の種類
情報:生年月日、カルテ番号、性別、病歴、内服薬の有無、エコーで計測した残尿量
4.お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせください。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出ください。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。
担当医師の氏名・所属・職名および連絡先
〒140-8522 東京都品川区東大井6-3-22
連絡先電話:03-3764-0511
研究責任者:副院長、泌尿器科・部長 青木九里