カマチグループ 東京品川病院

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消化器内科

疾患・治療について

消化管

早期の食道、胃、大腸癌に対しての内視鏡治療について

内視鏡器機の発達、内視鏡受験者数の増加により早期に消化管癌(食道癌、胃癌、大腸癌)が診断される機会が増えました。また、内視鏡技術の発達、諸先輩方の努力により、内視鏡による早期消化管癌の低侵襲治療が可能になっています。
低侵襲の内視鏡治療の一つが内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)であり、従来の内視鏡治療では切除できなかった広範な病変や瘢痕形成病変に対しての治療も可能になりました。我々は直接的、指導医として2000以上のESDを行ってきた経験をもとに治療いたします。

食道癌

「食道」周囲には肺、心臓、大血管といった重要臓器があります。
消化管癌の治療の中で、外科的切除と内視鏡治療の侵襲の差が大きく、内視鏡治療の恩恵が最も大きいのも食道癌とも考えられ、積極的にESDを行っています。
食道扁平上皮癌の早期発見に有効であるNarrow Band Image(NBI)を全部屋の内視鏡機器に搭載しています。

食道癌に対してのESD:エキスパートからのコツ

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212097113700220(動画あり)
Ishii N, et al. Endoscopic Submucosal Dissection for Squamous Cell Carcinoma of the Esophagus: Tips and Tricks from the Expert. VJGI endoscopy 2013; 1: 46-47.

胃癌

ヘリコバクター・ピロリ菌は胃癌発生の重要な危険因子であり、その感染率が高い日本では、今でも胃癌の発生数が多いです。
ピロリ菌による胃炎が進行するとピロリ菌の除菌治療が成功しても、その後胃癌が発生することがあり、胃癌の早期発見、早期治療は今も変わらず重要です。胃癌の内視鏡治療において、ESDは中心的な役割を果たしており、大きな病変に対しても行っています。

胃がん(10cm)に対してのESD

  • 胃体中部から胃角部にかけて進展する 3/4周性の早期胃癌 0-Ⅱaです。
  • ESDで一括切除を行いました。ESD後潰瘍が広範に観察されます。
  • 長径12cmの切除検体。病理学的に治癒切除を確認しています。

十二指腸癌

近年の内視鏡機器の発達、診断技術の進歩により、早期の十二指腸癌も診断されるようになりました。当院では、表在性非乳頭部十二指腸乳頭部腫瘍のみならず、乳頭部腫瘍に対しても内視鏡治療を積極的に行っています。

十二指腸腫瘍に対してのESD

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4435402/ (動画あり)
Ishii N, et al. Safety and efficacy of endoscopic submucosal dissection for non-ampullary duodenal neoplasms: a case series. ACG Case Rep J 2015; 2: 146-149.

大腸癌

食事の欧米化もあり、大腸癌の発生数は増加傾向です。
大腸粘膜内癌の一部も通常の内視鏡治療[内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)、内視鏡的ポリペクトミー]では治療困難でありESDが必要になります。

大腸憩室出血に対しての内視鏡治療について

高齢化と抗血栓薬の頻用によって、下部消化管出血が増えています。下部消化管出血の原因として最も多い疾患が大腸憩室出血です。急性下部消化管出血に対しての診断、治療で有用なものが、大腸内視鏡検査であり、当院では、下部消化管出血、大腸憩室出血に対して積極的に内視鏡検査、治療を行っています。オピニオンリーダーの1施設として、十分な情報、治療を提供できると自負しています。

  • 上行結腸憩室からの活動性出血が観察されます。
  • 内視鏡的結紮術(Endoscopic band ligation: EBL)で止血しました。

膵疾患

膵嚢胞(IPMN、MCN、SCN、仮性膵嚢胞 等)

膵嚢胞とは膵臓の内部や周囲にできる袋状の液だまりのことです。症状がないものも多く、健康診断の腹部超音波検査等で見つかることが多い疾患です。
膵嚢胞は炎症性に出来たのもの(仮性膵臓嚢胞)や、腫瘍性(IPMN,SCN,MCN等)のものがあります。放置してよいものとありますが、悪性化のリスクがあり、手術が必要なケースもあるため出来るだけ正確な診断を行う必要があります。
当院では腹部エコー、CT、MRIに加え、近年発達している超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography: EUS)での検査を積極的に行なっています。膵嚢胞を検診で指摘された方や、以前膵嚢胞を指摘されていてより詳しい精査を希望される方の受診をお待ちしております。

膵癌

膵癌は年々増加傾向である疾患であり、また予後の悪い疾患として認知されています。胃や十二指腸の中から膵臓を詳細に観察できる超音波内視鏡検査の発展により膵癌の早期発見が可能になり、予後の改善が期待できます。
当院ではIPMN等の膵癌ハイリスクの患者さんをCT、MRI、EUS等の検査で定期的なフォローを行うことにより膵癌の早期発見・治療に努めています。
悪性腫瘍が疑われる病変に対してはEUS-FNA(超音波内視鏡下吸引法)により生検し確定診断をつけます。

急性膵炎後の膿瘍に対しての内視鏡的ドレナージ術

近年、超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography: EUS)の機器の発達、技術の進歩により、今までは高侵襲であった治療も低侵襲かつ有効に治療できるようになりました。急性膵炎等の腹部膿瘍に対してのEUS下ドレナージはその一つです。
当院では、EUSのエキスパートにより、同ドレナージ治療も積極的に行っています。

重症急性膵炎で生じた壊死組織に感染が生じ、膿瘍が広範に観察されています。
十二指腸下行部から6本のドレナージチューブを膿瘍腔に留置しました。
膿瘍腔は著明に縮小し、ドレナージチューブも2本を残し抜去しています。その後2本も抜去しましたが、再発はありません。

胆管結石及び胆管狭窄に対しての内視鏡治療について

術後腸管に対するERCP
高齢化社会を迎え、胆道結石、悪性腫瘍の患者さんが増えています。胆道は肝臓から分泌される「胆汁の流れ道」であり、十二指腸につながっている胆管と胆汁を貯蔵し濃縮する袋である胆嚢から成ります。胆嚢と胆管が合流し、十二指腸につながっている部分を総胆管と呼称します。
総胆管に結石や腫瘍が生じ、胆汁の流れが妨げられてしまうと、黄疸が生じ、炎症が起きると(急性胆管炎)、容易に菌が肝臓を介して全身を巡ってしまう敗血症を発症することがあります。敗血症は多臓器不全に至る重篤な病態であり、緊急の対応が必要です。
内視鏡治療(ERCP関連手技)は手術による治療と比較して、少ない侵襲で、大きな治療効果が得られることが特徴です。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)同様に口から内視鏡を挿入し、X線透視を用いながら、十二指腸を介してステントの留置、結石の除去を行います。
当院では、通常のERCP関連手技の他、ERCPのエキスパートにより難易度の高い胃術後のERCPも積極的に行っています。

肝疾患

肝疾患について

肝臓は体内において多くの代謝、解毒などをおこなっており、沈黙の臓器と言われるだけあって、病態が進行しなければ症状が表に出てくることはあまりありません。多くの方は検診や、他科受診の際に血液検査をして肝機能異常が指摘されることで、肝臓の病気を知ることとなります。
肝臓が傷む病気としては、マスコミを騒がせたB型肝炎やC型肝炎などのウイルス疾患のみならず、身近なところでは太りすぎ、運動不足などにより肝臓に脂肪が蓄積した脂肪肝、飲酒のしすぎによるアルコール性肝障害、サプリメントを含めた薬剤による肝障害などがあります。
長い期間肝臓が痛むと肝臓は次第に硬くなり、機能が悪化し、いわゆる肝硬変となります。その頃になると肝細胞癌なども生じてきます。
以下、項目に分けて当院における肝疾患治療について説明いたします。

急性ウイルス性肝炎および慢性肝炎について

沈黙の臓器であるはずの肝臓も、傷みすぎると症状をあらわします。
薬剤やアルコールによる肝障害も重症化すれば症状が出てきますが、より頻繁に症状が出るものとして、急性ウイルス性肝炎があります。重篤な肝炎を起こしうるウイルスは食べ物を介して伝染するA、E型があり、輸血などの血液、体液を介して伝染するB、C型の急性肝炎ウイルスが知られています。その他にも、それほど重篤ではないのですが、体調を崩す程度までのウイルス肝炎として、アデノ、ヘルペス、マイコプラズマ、サイトメガロなどあります。
多くのウイルス疾患では急性のみで終わって、慢性化することはあまりないのですが、その炎症が半年以上持続した場合は慢性肝炎と判断されます。
当院では、上記の急性肝炎、慢性肝炎に対して積極的に精査、治療を行っていて、特にB型肝炎、C型肝炎に対しては近年さかんに開発されている抗ウイルス薬を用いて多くの患者さんの治療にあたっています。

その他の特殊な原因による慢性肝炎について

もちろんウイルス性以外にも遺伝的な原因で生じる鉄や銅の過剰蓄積によって生じる疾患や、薬剤、アルコール多飲、免疫的な病気によるものなどがあります。
私たちは肝機能障害を見つけた際は、まずその肝炎の原因を突き止め、その診断に従って治療を入院、外来に渡り継続して行なっています。

肝硬変の治療について

肝炎が長期にわたり持続した時は、それまでは気がつかなかった様々な症状が表に出てきます。肝硬変の初期、中期ぐらいではなかなか生じませんが、その時期を逸すると腹水や体のむくみが生じたり、消化管出血を生じて吐下血を生じたり、精神的に不安定となったりします。
大切なことは、その原因となる病態を直すことで、一旦悪化したものもある程度は回復することもあります。
当院では上記の症状に対して治療を行いつつ、その肝硬変に至った原因を確定し治療を行うことで、患者さんとともに病気に立ち向かっています。

肝細胞癌について

長年にわたり慢性的に肝臓に炎症が持続した時に、不幸にして悪性腫瘍ができます。特にB,C型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の際は生じやすいと報告されています。
当院においても、リスクのある患者さんには血液、エコーやCTなどの画像にて肝細胞癌のスクリーニングを定期的に行なって早期発見に努めています。
もし万が一、肝細胞癌が生じた際の治療として下記を行っていて、個々の患者さんの状況に考慮しつつ、日本肝臓学会のガイドラインに従い、治療にあたっています。

  • 内科的な治療であるラジオ波焼灼療法波(RFA)、抗がん剤治療
  • 放射線医師とタッグを組み行う肝動脈塞栓療法(TACE)
  • 外科による手術