胸膜腫瘍
胸膜腫瘍は、肺の表面を覆う「臓側胸膜」や、胸壁の内側を覆う「壁側胸膜」から発生する腫瘍の総称です。
胸膜腫瘍の原因と特徴
原発性のものと、肺がんや乳がんなど他の臓器のがんが胸膜に転移してきた「転移性胸膜腫瘍(がん性胸膜炎)」に分けられます。
原発性胸膜腫瘍の中で最も重要なのが「悪性胸膜中皮腫」です。これはアスベスト(石綿)の吸入曝露と深く関連しており、曝露から数十年の潜潜伏期間を経て発症し、非常に進行が早く予後不良な悪性腫瘍です。一方、良性または悪性度の低い原発性腫瘍として「孤立性線維性腫瘍」などがありますが、これらは比較的まれです。悪性胸膜中皮腫は胸水が大量に貯留することが多く、早期発見が困難な疾患の一つとして知られています。
主な症状
良性の腫瘍(孤立性線維性腫瘍など)の場合、小さいうちは無症状で、検診のCTなどで偶然発見されることがあります。腫瘍が大きくなると、咳や胸痛、呼吸困難などが生じます。
悪性胸膜中皮腫の場合、初期段階では無症状のことが多いですが、病状が進行し胸膜に腫瘍が広がり胸水が溜まり始めると、胸の痛み(持続的な鈍痛)、息苦しさ(呼吸困難)、乾いた咳、胸部圧迫感などが現れます。さらに進行すると、全身の倦怠感、原因不明の発熱、体重減少などの全身症状を伴うようになります。症状が出現した時には、すでに片側の胸腔全体にがんが広がっていることが多いのが現状です。
検査について
胸部X線検査やCT検査で、胸水の貯留、胸膜の肥厚、腫瘤の有無を確認します。胸水がある場合は胸腔穿刺を行い、細胞診などで悪性細胞の有無を調べます。
確定診断と組織型の決定のためには、腫瘍組織の一部を採取する生検が不可欠です。局所麻酔下での針生検も行われますが、より確実に十分な組織を採取するため、全身麻酔下での胸腔鏡検査(VATS)による胸膜生検が標準的に行われます。病期の評価にはPET-CT検査やMRI検査も併用されます。
治療について
胸膜腫瘍の治療は、腫瘍の性質(良性か悪性か)や進行度によって異なります。
良性の孤立性線維性腫瘍などは、外科的切除によって根治が期待できます。
悪性胸膜中皮腫の場合、早期で切除可能な状態であれば、胸膜を肺や心膜・横隔膜ごと全て摘出する「胸膜肺全摘術」や、肺を残して胸膜だけを剥がす「胸膜切除/肺剥皮術」といった大掛かりな手術が行われることがあります。しかし、診断時に進行していることが多く、その場合は化学療法(抗がん剤)や免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物療法が主体となります。また、息苦しさなどの症状を緩和するために、溜まった胸水を抜いて胸膜を癒着させる治療(胸膜癒着術)や放射線治療など、QOL(生活の質)を維持するための緩和的治療も重要な柱となります。
