気管支喘息
気管支喘息は、空気の通り道である「気道」に慢性的な炎症が起こり、さまざまな刺激によって気道が狭くなる病気です。
症状が出たり落ち着いたりを繰り返す特徴があるため、診断が難しい場合があります。
喘息のメカニズム
喘息の本態は、気道(空気の通り道)における慢性的な炎症です。
炎症の原因
日本人に多い気管支喘息の原因としてType 2炎症が注目されています。 ダニや花粉、環境物質が刺激となり、気道上皮細胞から出されるアラーミン(TSLP, IL-33等)がリンパ球を活性化し、IL-4, IL-5, IL-13といったサイトカイン(情報伝達物質)が放出されます。
リモデリング
炎症を放置すると、平滑筋の肥大や粘膜下層の線維化、粘液栓の形成によりリモデリング(気管支壁の肥厚)を来すと、吸入薬の効果が出にくくなるため、早期の治療が鍵となります。
診断:多角的な検査・視点による評価
気管支喘息の診断は容易ではありません。当院では以下の検査を組み合わせて診断を確定させます。
| 呼吸機能検査(スパイロメトリー) | 単なる肺活量だけでなく1秒量やフローボリュームカーブ、末梢気道炎閉塞の指標となる数値を診ていきます。また、薬剤負荷試験では、気管支拡張薬使用前後の1秒量の変化値が12%かつ200mL以上改善すれば、可逆性があると判断し、喘息を支持する根拠となります。 |
|---|---|
| 呼気中一酸化窒素(FeNO) | 呼気中のNO濃度を測ることで、気道の好酸球性炎症を推定することができます。FeNOが高ければ、Type2炎症の可能性が高まります。 |
| 血液検査 | 血中好酸球数、総IgE、特異的IgEの測定を行い、どの気管支喘息のタイプかを判断します。また、重症喘息治療においては、生物学的製剤の適応を判断するためのバイオマーカーとしても活用します。 |
治療
長期管理の基本(コントローラー)
基本的に吸入ステロイド(ICS)を中心とした治療を行います。
長時間作用型β2刺激薬 (LABA)や吸入ステロイドと配合された2剤の配合剤(ICS/LABA)として使われます。最近ではLAMA(長時間作用型抗コリン薬)との3剤の配合剤も使用されます。
生物学的製剤
吸入薬を最大量使ってもコントロールが難しい「重症喘息」や「難治性喘息」の方には、生物学的製剤の使用を検討します。各種バイオマーカーや症状の特徴から最適な生物製剤を選択します。
以下に一覧を示します。
| 製品名 | ゾレア | ヌーカラ | ファセンラ | デュピクセント | テゼスパイア | エキシデンサー |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般名 | オマリズマブ | メポリズマブ | ベンラリズマブ | デュピルマブ | テゼペルマブ | デペモキマブ |
| 発売年 | 2009年 | 2016年 | 2018年 | 2018年 | 2022年 | 2026年 |
| 発売元 | ノバルティスファーマ | グラクソスミスクライン | アストラゼネカ | サノフィ | アストラゼネカ | グラクソスミスクライン |
| 作用機序 | 抗IgE抗体 | 抗IL-5抗体 | 抗IL-5α抗体 | 抗IL4α抗体 | 抗TSLP抗体 | 抗IL-5抗体 |
| 用法用量 | 血清IgE抗体・体重にあわせて(2週または4週毎) | 1回100mgを4週間毎 ※6歳以上12歳未満の小児:1回40mg |
1回30mgを初回、4週間後、8週間後、以降8週間毎 | 初回に600mg、以降300mgを2週間毎 | 1回210mgを4週間毎 | 1回100mgを26週間毎 |
| 気管支喘息以外の適応 | 特発性の慢性蕁麻疹 季節性アレルギー性鼻炎 |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) | アトピー性皮膚炎 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 結節性痒疹 特発性の慢性蕁麻疹 2型炎症を伴う慢性閉塞性肺疾患 |
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 | 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 |
最後に
気管支喘息のガイドラインでは、気管支喘息の臨床的寛解(Clinical Remission)が提唱されています。臨床的寛解とは、単に一時的な症状がない状態を指すのではなく、「12ヶ月以上の長期にわたり症状がなく、発作も起きていないこと」「全身性ステロイド薬(飲み薬)を使用せずに済んでいること」「呼吸機能が良好な状態で安定していること」の3つを同時に満たす状態を指します。我々は、上記のような最新の治療や、治験等を活用して、臨床的寛解を得て、治癒(Cure)を目指します。
